キリスト教を通して宗教を考える島

コンカナ王国から鬼岳を望む
活火山と言われる鬼岳を真横に見ながら飛行機は着陸する。平地がほとんどない五島列島において、この福江島にだけは、比較的多くのなだらかな土地がある。五島藩の中心地であったであろう石田城から空港まで、かなり開けているという印象を受けた。手渡されたパンフレットを見ると島は3つしかない。南側の3つが五島市で、北側2つが上五島町となっているためだそうだが、一番の観光資源であろう潜伏キリシタンを考える上では密接しているのだから、資料も共同で作ればよいのにと思ってしまう。とはいえ、五島市はしっかりした資料を作っているようで、webにもPDFファイルがアップされている。これを一通り読むと背景の理解が進むので、旅に出る前に目を通しておくとよい。西彼杵という地名もよく出てくるのだが、実に覚えにくい「にしそのぎ」という読み方も頭に入れておく方がよい。
我々ツアー客一行は、神父から潜伏キリシタンの歴史を学んだのだが、サンドイッチ構造と理解するのがよいとのこと。①ザビエルによる布教~禁教令、②禁教期間の潜伏、③信徒発見、④キリシタン禁教の高札撤去
 
海の幸が豊富
五島列島最大の島である福江島では漁業も盛んなようで、夕食では海の幸をこれでもかというくらいに出して頂いた。「きびなご」とは聞いたことがなかったが、その刺身は大変においしいものだった。体長は10cm程度というから、さばくのが大変ではないかと違った点が気になってしまう。また伊勢海老の活き造りも想定外。伊勢という地名に惑わされてしまうけど、間違いなく美味しいです。この海の幸についても五島市はしっかり宣伝しています。ここら辺、上手な気がする。
 
五島は海の幸だけではない
海の幸と書いたのですが、五島牛も有名ですね。地元でさえもあまりの値段にハレの日にしか手が出ないとのことでしたが、陶板焼きをはじめとして大変おいしゅうございました。ちなみに家畜業も盛んなのだとか。また、離島にありながらコメ作りも盛んで、今ではやっていないものの昔は二毛作も行われていたのだと。
 
ふるさと創生1億円を使って建てたと聞いたけれども、鬼岳の中腹には天文台がある。口径60cmというのがどのくらいのレベルにあるのかは分からないが、かなりしっかりと星を観察することが出来た。最近では、鬼岳星空ナイトツアーと銘打って、星空観察会が行われている。リクライニングチェアに寝そべりながら、星座の解説を受ける。緑色レーザーで説明してもらえるので分かりやすく、初心者でも安心して参加できる。
空気が澄んでいて、光害もほとんどない離島という地の利を活かした施設とプランだ。
 
なだらかな山肌が気持ちよい
福江空港と鬼岳の間にコンカナ王国がある。宿泊施設だけではなく温泉、ワイナリー、レストランなどがあって、宿泊するには良い場所だ。朝、このコンカナ王国から鬼岳に向かってジョギングしてみる。大した距離ではないけれども、ずっと上り坂なのでそれなりに負荷がある。ちょっとした尾根を巻いて2kmも走れば鬼岳が目の前に出てくる。3年に1度と言っていた気がするけれども、この山を焼くらしい。なので木が無く、一面草原となっている。それが気持ちよい緑の風景を作っている。なだらかな姿と相まって見ていて飽きない。
 
右手奥が天文台
昨晩お邪魔した天文台を横目に山頂に向かっていけば、どんどんと見晴らしがよくなり、あたりを一望できるようになる。11月上旬という時期も抜群で、とても爽やかなジョギングとなった。この福江島では五島列島夕やけマラソンと五島つばきマラソンが開催されているとのことだが、確かにマラソンにはうってつけの離島だと思った。
 
島という感じのデザインが好き
五島バスの案内で大瀬埼灯台に向かう途中、バスガイドの橋本さんから様々なことを教えてもらう。五島列島は140の島からなり、そのうち18島が有人。福江島の人口は3.5万人で、全体で5.7万人。診療所しかないと思うな300床の病院ができた。ビッグヒライの素うどんは100円、などなど。観光旅行だとマイカーやレンタカーで目的地までまっしぐら、となってしまいがちだけど、こうしてガイドさんからその土地の話を聞いて理解するのは面白い。ガイドという仕事にもっと重きを置いても良いと思った。
 
ずっと見ていたい景色
津々浦々に灯台はあるのだろうけど、ここ大瀬埼灯台は日本の灯台50選に選ばれるだけのことはある。駐車場近くの展望台からの眺めは飽くことがない。高さ150mにもなる断崖が大瀬山から伸びている様が美しい。ここからはハチクマが600km先の中国を目指して飛びだっていくのだと。近くに空海が唐に渡ったとされる場所もあるのだが、いかにも国境という雰囲気がある。ところで潜伏キリシタンで有名な五島列島空海の史跡も同居しているというのが面白い。
 
明星院から。院内は撮影禁止。撮影:Esaki
日本遺産にも登録されている明星院にて話を伺ったところ、島民の9割は仏教徒とのことで、過半がキリシタンのイメージは簡単に覆されてしまった。遠藤周作の沈黙に描かれる潜伏キリシタンの生き様をどう理解してよいのか、ここに来ても答えを得ることはできなかった。その明星院、もともとの旅程には入っていなかったのだが、急きょ追加。ガイド橋本さんのおススメでそうなったのかまで確認し損ねたけれども、行って話を伺えたのは良かった。
 
いい雰囲気を出しています
堂崎天主堂はまた辺鄙なところにある。禁教が解かれた後、一番に建てられた教会とのことだが、辺鄙なところにあるだけあって絵になる。仏教寺院とキリスト教会を行ったり来たりして日本人におけるあいまいな宗教感、でも頑なに守り続けた潜伏キリシタンの強い宗教心を自分なりに咀嚼していけるのがこの島の醍醐味だ。
 
看板おばあちゃん
そして教会の隣にあるBaby Qooは、キリスト教でさえ土着のものと融合させた日本文化そのものという感じで、厳かさの隣にポップさを感じるような場所だった。海を見ながらのはちみつトーストは美味しかった。
 
 
 
気持ちの良い海岸
福江島には平地が多いと書いたけれども、そのメリットは砂浜の多さにも表れる。やっぱり離島に来たからには海でも遊びたいと思って、そんな自分に香珠子海水浴場はとても気持ちがよい場所だった。それほど大きくない海水浴場だが、土産物屋もあるし、予約は必要だか椿茶屋という食事処もあるのでおススメだ。
 
 
五島うどんはツルツルしているのが特徴です
お土産はかんころ餅五島うどんかんころ餅はサツマイモを練りこんだもので、地元では家庭でも作るようだが手土産にもおススメだ。稲庭うどん讃岐うどんに次ぐといわれる五島うどんは地獄炊きで頂くのが良し。
 
 
この福江島では、海の幸をはじめとした郷土色豊かな食材を堪能しながら潜伏キリシタンに思いをはせてみてはどうだろうか。
 
1泊2日モデルコース
福江空港~大瀬埼灯台~井用浦教会~コンカナ王国(泊)~鬼岳天文台~鬼岳ジョギング~堂崎天主堂~Baby Qoo~香朱子海水浴場~椿茶屋~明星院福江空港